紅茶や緑茶に砂糖を溶かし、スコビーと呼ばれる菌のかたまりで発酵させる、甘酸っぱい発酵ドリンク「コンブチャ」。昆布茶とは何が違うのか、どうやって発酵するのか、基本の作り方と失敗しないためのポイント、フルーツで香りをつけるシュワシュワの二次発酵まで、2016年からコンブチャを育ててきた料理家・安藤千英がご紹介します。
紅茶や緑茶に砂糖を溶かし、「スコビー」と呼ばれる菌のかたまりを入れて発酵させる、ほんのり酸っぱくて、かすかにシュワッとした発酵ドリンク。それがコンブチャです。日本では1970年代に「紅茶きのこ」の名前で流行したこともあり、今はアメリカ西海岸などから、新しい発酵ドリンクとしてふたたび広まっています。2016年から自宅でコンブチャを育ててきた私が、コンブチャとは何か、基本の作り方、フルーツで香りをつける二次発酵まで、まとめました。
コンブチャとは
コンブチャ(Kombucha)は、甘くした紅茶や緑茶を、酵母と酢酸菌などが一緒にくらす「スコビー」で発酵させた飲みものです。味は、りんご酢を思わせるさわやかな酸味と、お茶の香り、ほのかな甘み。発酵の途中でできる炭酸ガスで、かすかに発泡します。
- 原料:お茶(紅茶・緑茶など)、砂糖、水、スコビー、種液(前に作ったコンブチャ)
- 発酵の期間:常温で1〜2週間ほど
- 味:甘酸っぱく、すっきり。発酵が進むほど酸味が強くなる
昆布茶とは別のもの
名前は似ていますが、日本の「昆布茶(こぶちゃ)」とは、まったく別の飲みものです。昆布は使いません。英語の「Kombucha」という名前の由来には諸説あり、はっきりとはわかっていません。
スコビー(SCOBY)とは
スコビーは、英語の「Symbiotic Culture Of Bacteria and Yeast(細菌と酵母の共生体)」の頭文字をとった言葉です。見た目は、白っぽいゼリー状の膜。酢酸菌がつくるセルロース(繊維)でできていて、その中や液の中で、酵母と細菌が一緒に暮らしています。日本では「マザー」「株」とも呼ばれます。
コンブチャは、どうやって発酵するの?
コンブチャの中では、2種類の微生物がリレーのようにはたらいています。
- 酵母:お茶に溶かした砂糖を食べて、アルコールと炭酸ガスをつくる
- 酢酸菌など:そのアルコールを酢酸などの有機酸に変える。この酸が、コンブチャのさわやかな酸味のもと
酸がたまっていくことで、液は酸性になり、ほかの雑菌が増えにくい環境になります。新しく仕込むときに、前のコンブチャ(種液)を加えるのはこのためです。
紅茶で育てる?ハーブティーではだめ?
コンブチャは、紅茶や緑茶など、カフェインを含む茶葉で育てるのが基本です。お茶に含まれる成分が菌の栄養になり、元気なスコビーが育ちます。
ハーブティーなど、カフェインを含まないお茶だけで仕込むと、菌の元気がなくなり、弱いスコビーになってしまうことがあります。カフェインが気になる方は、まずは紅茶や緑茶で元気なスコビーを育て、香りづけの二次発酵で、ハーブティーやフルーツを楽しむのがおすすめです。

基本のコンブチャの作り方
材料(1Lのびん1本分)
- 水 900ml
- 紅茶(または緑茶)の茶葉 5g(ティーバッグなら2〜3個)
- 砂糖(グラニュー糖、きび砂糖、甜菜糖など) 70g
- スコビー 1枚
- 種液(前に作ったコンブチャ。スコビーが浸かっていた液) 100ml
道具
- 口の広いガラスびん(1L以上)
- キッチンペーパーまたはさらし、輪ゴム
- 鍋、茶こし
作り方
- びんと道具は熱湯をかけるか、食品用アルコールで拭いて、清潔にしておく。
- 鍋で水を沸かして火を止め、茶葉を入れて5〜10分おき、茶こしでこす。
- 熱いうちに砂糖を加えて、よく溶かす。
- 人肌より冷たい温度(30℃以下)になるまで、しっかり冷ます。熱いままスコビーを入れると、菌が弱ってしまいます。
- びんに移し、種液を加えて混ぜ、スコビーを静かにのせる。
- キッチンペーパーやさらしでふたをし、輪ゴムでとめる。コンブチャは呼吸しているので、ふたは密閉しません。コバエなどが入らないように、すき間なくとめます。
- 直射日光の当たらない、22〜28℃くらいの場所に置き、1〜2週間発酵させる。
- 7日目ごろから、清潔なスプーンやストローで味見をする。甘みと酸味のバランスが好みになったらできあがり。
- スコビーと、種液用のコンブチャ100mlほどを取り分けて、次の仕込みに使う。残りはびんに移して冷蔵庫へ。
うまく発酵しているときのサイン
- 表面に、新しい白っぽい膜が張ってくる(新しいスコビー)
- 茶色い糸のようなものが、膜の下にぶら下がる(酵母のかたまり)
- お酢のような、さわやかな酸っぱい香りがする
こんなときは、すべて捨てる
表面に、綿毛のようにふわふわした、緑・青・黒などのカビが生えたときは、スコビーも液もすべて捨ててください。カビの部分だけ取りのぞいて使うことはできません。種液を入れずに仕込むと酸が足りず、カビが生えやすくなります。
フルーツで二次発酵、シュワシュワのフレーバーコンブチャ
できあがったコンブチャを、フルーツと一緒に密閉びんに入れて、もう一度短く発酵させるのが「二次発酵」です。フルーツの糖分で発酵が進み、びんの中に炭酸ガスがたまって、シュワシュワとした発泡感が生まれます。フルーツの香りや色もうつって、見た目も華やかに。
材料(500mlのびん1本分)
- できあがったコンブチャ 450ml
- 好みのフルーツ 50g(ブルーベリー、ブラックベリー、いちご、りんご、もも、パイナップルなど)
- 好みで、しょうがの薄切り2〜3枚、シナモンスティック1/2本、ローズマリー1枝など
道具
- 炭酸飲料に使える、耐圧の密閉びん(スイングトップのびんなど)
作り方
- フルーツは洗って水気をふき、大きいものは小さく切る。ベリーは軽くつぶすと香りが出やすい。
- 清潔な密閉びんにフルーツ(とスパイスやハーブ)を入れ、コンブチャを注ぐ。びんの口から2〜3cmはすき間をあける。
- ふたをしっかり閉めて、常温(20〜25℃)に1〜3日置く。
- 1日に1回、ふたを少しだけ開けて、たまったガスを抜く。シュワッと音がして、好みの発泡感になったら冷蔵庫へ。
- よく冷えたら、茶こしでフルーツをこしていただく。冷蔵庫で1週間ほどを目安に飲みきる。
二次発酵の注意
- びんの破裂に気をつける:ガスがたまりすぎると、びんが割れたり、開けたときに中身が噴き出したりすることがあります。必ず耐圧のびんを使い、毎日ガス抜きをして、常温に長く置かないでください。開けるときは、冷やしてから、布をかぶせてゆっくりと。
- アルコール分:コンブチャは発酵の途中でアルコールができるため、ごくわずかにアルコールを含みます。二次発酵を長く続けると、アルコール分が増えていきます。日本では、アルコール分1%以上の飲みものを免許なく造ることは、酒税法で認められていません。二次発酵は短めに切り上げて、早めに冷蔵庫へ入れてください。お子さんや妊娠中・授乳中の方、お酒に弱い方、車を運転する方は控えましょう。
コンブチャを楽しむときに
- はじめて飲むときは、少しの量から。酸味が強いときは、炭酸水や水で割ると飲みやすくなります。
- 酸が強い飲みものなので、金属の容器に長く入れておくのは避け、ガラスびんで保存します。
- スコビーは、手作りのものを人に分けるときも、衛生に気をつけて。市販のスコビーを使う場合は、説明書きにしたがってください。
私とコンブチャ
私がコンブチャに出会ったのは、2016年。恩師がロサンゼルスを訪れたときに手にしたスコビーを、分けていただいたのがはじまりでした。当時は日本での情報もまだ少なく、毎日のように、いろいろなお茶で仕込んでは味をみて、研究と実験の日々でした。
そのあと夢中になったのが、黒糖や甜菜糖で育てる「ウォーターケフィア(黒糖きのこ)」。紅茶を使わないノンカフェインの発酵ドリンクで、香りも酸味もおだやか。実は、コンブチャよりこちらのほうが好きだったりします。
以前は、スコビーの株分けをふくむレッスンも行っていましたが、今は食品衛生の観点から、株の配布や仕込みのサポートは行っていません。
発酵のしくみについてもっと知りたい方は、発酵とはもあわせてお読みください。



