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日本の麹を学ぶために、旅の3日間を。10年目の教室で感じた、発酵がつなぐ世界

コラム

日本の麹を学ぶために、旅の3日間を。10年目の教室で感じた、発酵がつなぐ世界

2026.10.14

FERMENTATION ALCHEMIST|A Journey into Japanese Koji

最近、&LAB TOKYOには海外からのゲストが訪れるようになりました。

AIからのおすすめをきっかけにお問い合わせをいただくことも増え、約1年かけて作り直してきたウェブサイトが、少しずつ世界との接点をつくってくれているように感じています。

東京・表参道で開いている、小さな料理のスクール。この12月で、開校から10年を迎えます。

振り返れば、始めた頃から心の中にあったのは、ローフードやリビングフードの素晴らしさを、いつか世界へ伝えていきたいという思いでした。

それが今、思いがけない形で、少しずつ現実になっています。

海外の方が選ぶのは、観光客向けの体験だけではなかった

海外からのお問い合わせが増え始めた頃、私が準備していたのは、旅行中でも気軽に日本の麹文化に触れられる体験レッスンでした。

ところが最近、少し意外なことが起きています。

海外のゲストが希望されるのは、短時間の体験ではなく、もともと日本の生徒さんに向けて作ってきた専門的なコース。そのひとつが、発酵アルケミストコース(旧 発酵プランナー養成講座)です。

実は、私が本当に深く伝えたいことは、このコースにたくさん詰まっています。

発酵調味料を作るだけではなく、麹菌の働きを知り、微生物の世界を観察し、なぜその変化が起こるのかを考える。これまで積み重ねてきた実験や観察の記録、科学的な知見も交えながら、発酵をひとつの現象として理解していきます。

私自身、料理家としての視点だけでなく、もっと深く知りたいという好奇心から学び続けてきました。

その少しマニアックな世界に、海外から興味を持ってくださる方がいるのです。

旅の途中の3日間を、麹のために

蒸した米に種麹をつけた箱を持つ Joy さん
蒸した米に種麹をつけた箱を持つ Joy さん

今回、タイからJoyさんが発酵アルケミストコースを受講してくださいました。基礎と中級を3日間で学ぶ、集中講座です。

この講座では、3日間をかけて麹を育て、その変化を観察していきます。

麹は、仕込んだ瞬間に完成するものではありません。温度や湿度、時間の経過によって変わっていく状態を見ながら、菌が育つ環境を整えていきます。

昨日と今日では何が違うのか。香りはどう変化したのか。なぜ、同じように仕込んでも違いが生まれるのか。

そんな小さな変化のひとつひとつが、学びにつながります。

旅行中の3日間は、とても貴重な時間です。東京には行きたい場所も、食べたいものも、体験したいこともたくさんあるはず。

その時間を、&LAB TOKYOで麹を育てることに使ってくださった。それが、私には本当にうれしいことでした。

食のプロや、生物学を学んできた人たちが訪れる教室

海外からいらっしゃる方には、食に関わる仕事をしている方が多くいらっしゃいます。

そして、もうひとつ特徴的なのが、生物学を学んでいる方や、過去に学んだ経験を持つ方がいることです。

料理と科学。一見すると別々の世界のようですが、発酵を深く知ろうとすると、このふたつは自然につながっていきます。

微生物がつくる酵素の働き。食材の成分が変化する仕組み。香りやうま味が生まれる過程。

私にとっては、どれも料理のおもしろさそのものです。

だからこそ、科学的な視点を持った方と麹について話す時間は、とても刺激的。教える立場でありながら、私自身も新しい問いをいただき、考える機会になっています。

「科学と創造性のバランスが素晴らしかった」

自分で盛りつけた一皿を持つ Joy さん
自分で盛りつけた一皿を持つ Joy さん

受講後、Joyさんから、とてもうれしい感想をいただきました。

特に心に残ったのは、科学と創造性のバランスについて触れてくださったこと。そして、学んだことを生かして、タイの食材やご自身のアイデアで新しい実験をしてみたいと書いてくださったことでした。

発酵を学ぶことは、レシピを覚えることだけではありません。

なぜそうなるのかを知ることで、食材が変わっても、環境が変わっても、自分で考え、工夫できるようになる。私が講座で大切にしてきたことを、Joyさんが受け取ってくださったように感じました。

日本で学んだ麹の知識が、タイの食材と出会ったら、どんな新しい料理が生まれるのでしょう。想像するだけで、私までワクワクしてきます。

基礎プラス中級クラスで作る麹調味料の一例
基礎プラス中級クラスで作る麹調味料の一例

言葉の壁は、あるようで、ないようで

もちろん、海外の方に専門的な内容を教えるには、大きな課題もあります。それは、言葉です。

私の英語は、決して流暢ではありません。ときには、思いがけない言い回しになってしまうことも。

まるで出川イングリッシュのような英語でも、恥ずかしがらずに堂々と伝えてみると、意外と通じるものです(笑)。

もちろん、発酵の仕組みや科学的な説明には、正確さも必要です。そのため、専門的な内容を伝えるときには、英語の教材や、英語のサポートスタッフも用意しています。

それでも、言葉だけでは伝わらないことを、実際の食材や香り、手触り、そして味が教えてくれる瞬間があります。

英語スタッフ(アシスタント)のチノくんと盛りつける Joy さん
英語スタッフ(アシスタント)のチノくんと盛りつける Joy さん

一緒に麹を観察して、変化に驚いて、味わってみる。そうしていると、言葉の壁は、思っていたほど高くないのかもしれないと感じます。

最終日の発酵料理
最終日の発酵料理

10年前には、想像していなかった未来

この12月で、&LAB TOKYOは10周年を迎えます。

始めた頃から、いつか世界へ広げたいと思っていました。でも、海外から食の専門家や研究分野に関心を持つ方々が訪れ、3日間かけて一緒に麹を育てる未来までは、想像していませんでした。

一方で、日本の方にも、もっとこの学びを届けたいと思っています。

発酵を知ることから、育てることへ。そして、自分自身の発想で発酵を暮らしや仕事に生かし、その魅力を次の誰かに伝えることへ。

発酵アルケミスト、そして発酵を伝える「発酵創家®」を目指す方が増えてくれたら、こんなにうれしいことはありません。

修了証を手にしたタイの Joy さんと安藤千英
修了証を手にしたタイの Joy さんと安藤千英

10年前には想像できなかった未来が、今ここにあります。そして、きっとこれからも、思いがけない出会いや発見が待っているのでしょう。

そう考えると、これからの10年も、とても楽しみです。


発酵アルケミストコース

麹を育て、観察し、発酵を科学と料理の両面から学ぶ専門コース。東京・神宮前の教室と、オンラインで受講できます。海外からの受講(英語サポートあり)については、英語の講座ページをご覧ください。

安藤千英
&LAB TOKYO

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