ローフードやロースイーツのレシピに出てくる「2時間浸水」「8時間浸水」。ナッツを水に浸けておく下ごしらえのことです。なぜ浸けるのか、ナッツ別の時間の目安、失敗しないやり方と保存の仕方まで、&LAB TOKYO がわかりやすく解説します。
ナッツの浸水(ソーキング)とは
ナッツの浸水とは、ナッツを数時間から半日ほど水に浸けておく下ごしらえのことです。英語では「ソーキング(soaking)」と呼ばれます。ローフードやロースイーツのレシピで「カシューナッツ(2時間浸水)」「アーモンド(8時間浸水)」と書かれているのは、この下ごしらえを済ませてから使う、という意味です。
浸水に使うのは、ローストしていない生のナッツ(ローナッツ)が基本です。ナッツに含まれる脂質は熱や空気で酸化しやすいため、ローフードでは加熱していないものを選び、生のまま生かします。
浸水したナッツは水を吸ってふっくらとやわらかくなり、ブレンダーにかけると、生クリームやクリームチーズのようななめらかさになります。焼かないチーズケーキも、ナッツミルクも、この下ごしらえから始まります。
なぜナッツを水に浸けるのか
1. やわらかくなり、なめらかに仕上がる
いちばん実感しやすいのが、食感の変化です。水を吸ったナッツは、ブレンダーで攪拌したときに粒が残りにくく、クリームやミルク、ソースがなめらかに仕上がります。フードプロセッサーで砕く生地も、しっとりとまとまりやすくなります。
2. 渋みがやわらぎ、風味がやさしくなる
くるみやアーモンドの薄皮には、渋みのもとになる成分が含まれています。浸水するとその一部が水に溶け出し、風味がやさしくなります。浸けた水が茶色く色づくのはそのためです。薄皮はむかずに、そのまま使います。
3. 「眠っている」ナッツを目覚めさせる
ナッツは植物の種子で、芽を出すまでは、発芽を抑える成分(酵素抑制因子)によって「眠った」状態を保っています。ローフードでは、水に浸けて発芽に近い状態にすることで、この成分がやわらぎ、ナッツが「目覚めた」生きた食材になると考えられています。玄米を水に浸けて発芽玄米にするのと、よく似た考え方です。
浸水によって成分がどのくらい変わるかは、ナッツの種類や浸ける時間によって異なり、研究によっても結果に幅があります。一方で、食感と風味の変化は、作ってみるとすぐにわかります。
ナッツ・種子別|浸水時間の目安
浸水時間は、ナッツのかたさや大きさによって変わります。やわらかいカシューナッツは短く、かたいアーモンドは長く。まずは下の表を目安にし、レシピに時間が書かれている場合は、そちらに合わせてください。
ナッツ・種子 | 浸水時間の目安 | 向いている使い方 |
|---|---|---|
アーモンド(生) | 8〜12時間 | ナッツミルク、クラスト(土台) |
カシューナッツ | 2〜4時間 | ナッツクリーム、ローチーズケーキのフィリング |
くるみ | 6〜8時間 | クラスト、ローブラウニー、パテ |
ヘーゼルナッツ | 6〜8時間 | ナッツミルク、チョコレートクリーム |
ピーカンナッツ | 6時間 | クラスト、トッピング |
マカダミアナッツ | 浸水不要(短時間でも可) | クリーム、ホワイトチョコレートのような味わいに |
ひまわりの種(生) | 4〜6時間 | ナッツを使わないクラストやパテ |
チアシードも水に浸けて使いますが、ナッツとは使い方が異なります。浸けた水は捨てずに、水を含んでとろみの出たジェルごと使います。
浸水のやり方|基本の4ステップ
- さっと洗う:ナッツをざるに入れ、流水でさっと洗います。
- たっぷりの水に浸ける:ボウルや保存容器に入れ、ナッツの2〜3倍の量の水を注ぎます。ナッツは水を吸ってふくらむので、水は多めに。
- ふたをして、冷蔵庫へ:ふたやラップをして、冷蔵庫で目安の時間浸けます。半日以上浸けるときは、途中で一度水を替えると安心です。
- 水を捨てて、すすぐ:ざるにあげて浸けた水は捨て、流水ですすいでから、水けをよく切って使います。
浸水したナッツの保存と、乾燥させて使う方法
水を吸ったナッツは、とても傷みやすくなります。浸水したら、その日のうちに使うか、しっかりと低温乾燥(ディハイドレーション)する。どちらかを必ず守ってください。
低温乾燥(ディハイドレーション)
水けを切ったナッツをディハイドレーター(食品乾燥機)に並べ、48℃以下の低温で1〜2日かけて、中までしっかり乾燥させます。カリッとした食感になり、密閉容器に入れて保存できます。そのまま食べたり、トッピングにしたりもできます。
どうしても、すぐに使えないとき
ディハイドレーターが無いなどで乾燥できないときは、水けをしっかり拭き取り、保存袋に入れて冷凍してください。
最近は、あらかじめ浸水と低温乾燥を済ませた、すぐに使えるローナッツも販売されています。忙しい日々の中では、こうした便利な食材を上手に取り入れるのもおすすめです。
失敗しないための注意点
- 夏場は必ず冷蔵庫で浸ける:水に浸かったナッツは、室温が高いと傷みやすくなります。
- 浸けすぎない:目安より長く浸けると、ふやけて風味が落ちます。やわらかいカシューナッツは、とくに浸けすぎに注意します。
- 浸けた水は使わない:渋みなどが溶け出しているので、料理には使わずに捨て、ナッツはすすいでから使います。
- 浸水したナッツは置いておかない:ナッツは腐敗しやすい食材です。浸水したら、その日のうちに使うか、必ず低温乾燥してください。
- 乾いたナッツの保存も大切:生のナッツは酸化しやすいので、密閉して冷暗所か冷蔵庫で保存します。
時間がないとき・浸水しなくてよい場合
- マカダミアナッツ:もともとやわらかく脂質が多いので、浸水しなくても使えます。
- 生のナッツが手に入らないとき:ローストしたナッツでも形は作れます。ただし、ローフードとしての良さはありません(下の「よくある質問」を参照)。
- すぐに使えるローナッツ:浸水と乾燥が済んでいるので、そのまま使えます。
よくある質問
Q. 常温で浸けてもいいですか?
A. 涼しい季節に短い時間浸けるだけなら常温でも作れますが、傷みやすいので、冷蔵庫で浸けるのが安心です。とくに夏場や、半日以上浸けるときは必ず冷蔵庫へ。
Q. 浸水したナッツが余ってしまいました。
A. ナッツは腐敗しやすいので、翌日に持ち越さないでください。その日のうちに低温乾燥(ディハイドレーション)するのが基本です。乾燥できないときは、水けをしっかり拭き取り、保存袋に入れて冷凍してください。
Q. 浸けた水は、ナッツミルクに使えますか?
A. 使いません。浸けた水は捨て、すすいだナッツに新しい水を加えてミルクを作ります。
Q. ローストしたナッツではだめですか?
A. どうしても生のナッツが手に入らないときは、ローストしたナッツでも形は作れます。ただし、ローフードとしての良さはありません。ローストしたナッツは、加熱によって脂質がすでに酸化しているためです。ローフードで生のナッツを選ぶのは、この酸化を避けるためでもあります。
浸水したナッツを使って、作ってみる
浸水の下ごしらえができたら、まずはなめらかなクリームを使うローチーズケーキや、ナッツとデーツを押し固めるスティックケーキから作ってみてください。この記事の下に、浸水したナッツを使うレシピを並べています。
生のナッツの選び方や浸水の考え方は、著書『&RAW LIVING Step1 ─ ローフードの教科書』の「はじめての生ナッツガイド」でも紹介しています。





