こんにちは。食と発酵を科学する料理家、安藤千英です。
毎日、料理の試作やレッスン、そして家族の食事の準備と、私の1日はキッチンと共にあります。そんな私の日常に欠かせない「道具」のひとつが、エプロンです。
今回、アパレルブランド「トケル。by kofta」のデザイナーさんとご縁があり、&LAB TOKYO とのコラボレーションエプロンを制作することになりました。
私が求めたのは、ただ美しいだけの衣装ではなく、汚れを気にせずガンガン洗えて、そのままふらりと外出もできるような「圧倒的な実用性とデザインの融合」です。
食をデザインする料理家と、服をデザインするデザイナー。
ふたつの視点が交差して生まれた特別なエプロンについて、完成までのストーリーをデザイナーさんとの対談形式でお届けします。

美しいより先に、ちゃんと働けること
安藤千英
今回のコラボレーションにあたり、私から最初にお願いしたのは「見た目の華やかさよりも、とにかく実用性を!」ということでしたね(笑)。
エプロンは撮影用の衣装ではなく、毎日の仕込み、レッスン、片付けから、そのまま家の夕飯の準備まで、文字通り「ずっと着ている」日々の道具です。
だからこそ、「ガンガン洗える」「シワになりにくい」「型崩れしない」「飽きがこない」という、かなり欲張りなリクエストをさせていただきました。
デザイナー|トケル。by kofta
そうでしたね(笑)。安藤さんからの「洗濯がしやすいこと」「丈夫であること」という絶対的な条件にどう応えるかが最初のスタートでした。
そこで、ご希望でもあった「デニムのような風合い」を持ちながら、シワになりにくく動きやすい、ポリウレタン入りのストレッチ素材などを提案させていただきました。
安藤千英
その素材と一緒にご提案いただいたのが、今回のベースになったデザインでした。
最初にサンプルを持ってきていただいた時、私はその形、特に片方の肩だけで吊るす「アシンメトリー(左右非対称)」なデザインに一目で惹きつけられたんです。
原型は、ブッチャーエプロン
デザイナー|トケル。by kofta
私自身、もともと「ブッチャーエプロン」と呼ばれるクラシックな形が好きで、いつか現代の日常着としてリプロダクトしたいと考えていたんです。
もとはフランスの職人が身につけていた仕事着で、そこからカフェやビストロで働く人たちへと広がっていった形です。彼らは作業をする時、どうしても体の片側(利き腕側)から激しく汚れてしまいます。だから、汚れやすい側を広く覆うために胸当てが斜めになり、あのアシンメトリーなワンショルダーの形が生まれたと言われています。
安藤千英
まさに「用の美」というか、過酷な実用から生まれた必然のデザインなんですね!
ワンショルダーは、サッと首から斜めにかけるだけで着られるので、忙しいキッチンでも本当に助かります。この特別なエプロンを、現代の私たちの暮らしに合うようにアレンジされた部分はありますか?
いまの暮らしに合わせて、変えたところ
デザイナー|トケル。by kofta
オリジナルの古いブッチャーエプロンには、基本的にポケットは付いていません。ですが、今回は安藤さんの料理教室での動きやすさや、主婦の方が家事で使うシーンを想定して、大きめのポケットを配置しました。スマホを入れたり、ちょっと寒い時に手を入れたりと、日常着としての使い勝手をプラスしています。
あとはやはり「素材」ですね。伝統の形を残しつつ、現代の生活に寄り添うストレッチ素材やリネンを採用したのが大きな特徴です。

見てほしいのは、後ろ姿
安藤千英
私はこのエプロン、正面から見た時の斜めのラインはもちろんですが、「後ろ姿」がすごく気に入っているんです。
デザイナー|トケル。by kofta
そう言っていただけて嬉しいです。後ろの生地が重なり合う段差の部分は、特に見ていただきたいデザインのポイントです。
また、着た時の動きやすさや体への馴染み方は、後ろの交差の分量で調整しています。巻きつきすぎるとタイトスカートのように動きにくくなってしまうので、様々な体型の方にフィットして、美しく動けるバランスを追求しました。

ai と shironezu、2つの色と素材
安藤千英
今回は ai(藍)と shironezu(白ネズ)という2つの色(素材)をご用意しました。
ai は私の希望だった丈夫なデニムライクなストレッチ素材。そして shironezu は、デザイナーさんからご提案いただいたリネン(麻)素材ですね。
デザイナー|トケル。by kofta
はい。ai は、もともとのブッチャーエプロンが持つワークウェア(作業着)としての力強さや雰囲気を表現しました。shironezu は、よりお洋服に近く、ベーシックでどんな着こなしにも馴染むカラーとしてリネン素材を選んでいます。少しの汚れなら目立たないという実用性も兼ねています。
丈の違いと、着方の自由
安藤千英
実は、この2つは素材だけでなく「丈の長さ」も少し変えていただいているんですよね。ai の方は少し短めの着丈120cm、shironezu の方は着丈131cmになっています。
デザイナー|トケル。by kofta
そうですね。ワークテイストな ai は、よりアクティブに動きやすい丈感に。リネンの shironezu は、生地の落ち感やドレープを美しく見せるために少し長めの丈に設定しました。
安藤千英
丈の長さは違いますが、どちらも肩紐で自在に長さの調整ができるのが素晴らしいですよね!
紐を前でキュッと結んでカフェエプロン風にしたり、後ろでゆったり結んでリラックス感を出したりと、その日の気分や服装に合わせて「着ることを楽しめる」のがこのエプロンの本当に面白いところだと思います。

デザイナー|トケル。by kofta
おっしゃる通りです。紐で調整ができるので、女性はもちろん、身長180cmくらいの男性でも美しく着ていただけるユニセックス仕様になっています。ご家族やパートナーとシェアして使っていただくのもおすすめですよ。
肩の紐と、腰の紐。2本で着方が変わる
安藤千英
このエプロンは、紐が2本ありますよね。肩の紐と、腰の紐。この2本で着方がずいぶん変わるので、ぜひ知っておいていただきたいところです。
デザイナー|トケル。by kofta
はい。肩の紐は、丈の調整です。通し方を変えるだけで、胸当ての位置と全体の丈が5〜10cmほど変わります。着丈が 120cm と 131cm と違っていても、身長150cmくらいの方から180cmくらいの方まで、同じ一枚で着ていただけるのはこの紐があるからです。
デザイナー|トケル。by kofta
腰の紐は、シルエットの調整です。後ろで結べばゆったりと。前に回してキュッと結べば、カフェエプロンのような雰囲気になります。結ぶ位置を少し変えるだけで、後ろの布の重なり(段差)の出方も変わります。紐は長めに取っていますので、余ったぶんは内側に入れていただいても大丈夫です。
安藤千英
その日の服や気分で結び方を変える。そこが毎日の楽しみになっています。
使うほどに、育っていく
安藤千英
着ていくうちに、どのように育っていくのかも楽しみですね。
デザイナー|トケル。by kofta
どちらの素材も、時間の経過とともにご自身の体に柔らかく馴染んでいきます。一緒に時を重ねて、自分だけの一枚に育てていっていただければと思います。
食と服が交差するところ
安藤千英
今回のエプロン作りを通じて、アパレルブランドである「トケル。by kofta」さんとして、食の世界とのコラボレーションはいかがでしたか?
デザイナー|トケル。by kofta
とても面白かったです。私たちはお洋服を作っていますが、そこへ安藤さんのような「料理家」の視点が入ることで、ファッションに圧倒的な「実用性」が吹き込まれました。食という観点と、お洋服という観点が交差する部分を表現できたと思います。手に取ってくださった方には、ルールに縛られず、ご自身のライフスタイルに合わせて自由に着ていただきたいですね。
安藤千英
私は「食をデザインする人間」で、デザイナーさんは「服をデザインする人間」。
今回はお互いのデザインが重なり合ったことで、文字通り日常に「トケル(溶ける)」服ができたと感じています。
服と食が繋がることで、衣食住のサイクルが心地よく循環していく。
『産地や生産背景にこだわり、信頼できる作り手たちと丁寧に素材から作り上げていく』というKOFTAさんのモノづくりへの理念は、私が食を通じて伝えたい想いとすごく重なりました。服と食が繋がることで、衣食住のサイクルが心地よく循環していく。このエプロンを通して、そんな私たちの「種まき」がたくさんの方に届くと嬉しいです。今日はありがとうございました!
「トケル。by kofta」コラボレーションエプロンの詳細を見る →
トケル。by kofta について
「トケル。by kofta」は、東京・神宮前から生まれたブランドです。
ブランド名の「トケル。」に込められているのは、服が人肌にトケル。リラックスした時間にトケル。私の心にトケル。という3つの「溶ける」。
着心地を起点に素材と向き合い、日本国内でつくられたオリジナルの生地(biotic fabric)で形づくる服です。主張しすぎず、けれど確かに日常を変えていく。リビングでくつろぐ時間のような心地よさ ── creature comforts。
衣・食・住が調和するとき、いつもの日常は心地よい時間へと変わっていく。
自然の本質を損なわず、身体の感覚に正直であること。それがトケル。by kofta の姿勢です。
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